第54章 嫉妬
「恋柱様もまたいらして下さいな。いつでもお食事を沢山ご用意致しますので。」
少し崩れた菫の言葉遣いに蜜璃と杏寿郎が少し固まった。
蜜璃が固まったのは勿論嬉しさと驚きからだ。
対して杏寿郎の反応は小さなショックからくるものであった。
菫が杏寿郎に初めて言葉を崩したのは、想いを告げてから一年以上も後の事だったからだ。
蜜「わあっ!もちろんです!!」
杏「………。」
杏寿郎はまたもやもやとしそうになり、自身の感情を恥じて眉を寄せた。
炭(…なんだろう。煉獄さんから…何かを我慢、しているような匂いが…。)
炭治郎は心配して声を掛けようとしたが、すぐに止めた。
感情が突然切り替わったように匂いがぷつんと途切れたからだ。
杏「うむ!本当に仲良くなったな!!甘露寺!いつでも来ると良い!!」
蜜「はいっ!!」
そう言う杏寿郎の顔には、どんな人の毒気も抜いてしまいそうな明るい笑顔が浮かんでいる。
炭「………。」
杏「では今度こそ行ってくる!留守を頼んだ!!」
蜜「お邪魔しましたぁ!!」
炭「あっ、い、いってきます!!」
菫は慌ただしく出発する三人に微笑んでから深々と頭を下げた。