第14章 醜い痣
杏「菫さん、誰か相談出来る人は居ないのか。前回より酷くなっているぞ。」
杏寿郎の視線に気が付いた菫は、何故杏寿郎が自身の名を知っているのかを疑問に思うよりも前に青ざめて自身の頬を隠した。
動揺から息が浅く速くなる。
(炎柱様に醜いものを見せてしまった。)
そう思いながら菫は後退った。
杏「菫さん?どうも様子が可怪しい。何が、」
杏寿郎が再び近付こうとすると、菫はぎゅっと目を瞑った。
「来ないで下さいませ!!」
強い拒絶に杏寿郎の表情が固まる。
菫は俯いたまま目を開いた。
「来ないで下さいませ…後生ですから…。」
杏寿郎は菫に何があったのかは分からなかったが、落ち着かせる事が困難であることを認めると静かに頷いた。
杏「薬を置いて行く。使ってくれ。」
菫は杏寿郎が去ったのを確認すると、薬が入った缶を拾い上げた。
(私が使うように作った訳ではなかったのに…。)
そう思いながら缶をきゅっと胸に抱いた。