第54章 嫉妬
「ええ。それで…お怪我は…?恋柱様もいらしたのでしょう…?」
不安そうな菫に杏寿郎が微笑む。
杏「多少はしているようだが、竈門少年も甘露寺も命に別状は無いそうだ!それにしても元教え子と今の教え子が勝ち星を上げるとは目出度いな!」
菫は杏寿郎の温かい笑顔を見て肩の力を抜き、『はい。』と言って微笑んだ。
杏寿郎はその笑みに目を細めると菫の頭に手を伸ばす。
杏「起こしてすまなかった。」
「…いえ、こんな有り難い報せを知らずに寝ていたら罰が当たります。教えて下さってありがとうございました。」
菫は杏寿郎の撫でる手が、どことなくいつもと違う気がして半歩後退って自室に入った。
すると杏寿郎が細い手首を捕まえる。
杏「きちんと抑えている。逃げないでくれ。」
菫はその言葉に安堵すると共に、杏寿郎が何かを抑えているのだと知って頬を熱くさせた。
何しろ今は前回首筋をなぞられた時とシチュエーションが似ているのだ。
夜であり、継子達が屋敷に居ない。
独特な静かな空気が菫の心臓を忙しなくさせた。