第14章 醜い痣
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杏「今晩は!良い加減、夜に一人で出歩くのは止めて頂きたい!!」
「…ッ」
放心状態で歩いていた菫は、気が付くと街の入り口まで帰って来ていた。
辺りはすっかり暗くなっている。
以前二人が出会った時より随分と遅い時間だった。
「………あ…、」
菫は思わず後退った。
杏寿郎は腫れた頬と異常な怯え方に眉を寄せた。
杏「俺を忘れてしまったのだろうか。覚えやすい風貌だと自負しているのだが。」
そう言うと菫に向かって歩を進める。
菫はびくっと体を揺らすと後退ろうとして尻餅をついた。
杏「大丈夫か!」
気が付くと心配そうに眉尻を下げた杏寿郎が目の前に立って手を差し伸べていた。
菫はすぐに首を横に振りながら自力で立ち上がる。
元より杏寿郎に触れるつもりは無かったが、少し手を上げようとするだけでも腕の痣は見えてしまいそうだった。
杏寿郎は大きな目で菫の頬を改めて見つめた。