第53章 遊郭に巣食う鬼
「杏寿郎さん。お先に失礼致します。」
菫が就寝の挨拶に来ると杏寿郎は手を止めて眩い笑顔を浮かべた。
杏「うむ!ゆっくり寝てくれ!!」
菫はその言葉に頭を下げ、自室に戻ると炭治郎達を信じて目を瞑った。
翌日、目を覚まし、杏寿郎に挨拶をして食事を作り、共に食べ、杏寿郎が寝たのを見届けると買い物へ行き、そして杏寿郎が起きると再び共に食事を取った。
(今夜はお帰りになられるかしら。)
二人切りの生活は静かで穏やかで心満たされるものがあったが、だからといって炭治郎達を気に掛けない理由にはならない。
杏「うむ!今日も変わらず美味かった!!君は本当に有能だ!!」
杏寿郎はそう誇らしげに言うとはにかんで微笑む菫の頭を撫でる。
杏(今日はまだ指令が来ていないな。)
杏寿郎は菫の頭を撫でながら、長期に渡っている任務に自身も向かう事になるかもしれないと思った。
しかし、結局杏寿郎には別の任務が入り、応援の指令は来なかった。