第52章 誕生日、そして二人の時間

「ですがリボンが…。」


どちらを付ければ良いのか分からなくなった菫がそう眉尻を下げると、杏寿郎はにこっと笑う。


杏「毎日使ってくれたろう！だいぶ草臥れている！なのでそれは俺のお守りに入れさせてもらう！！」


杏寿郎はすぱんとそう言うと、菫を半回転させてするりとリボンを解いてしまった。


「あっ」


菫がそう言って振り返ろうとすると、杏寿郎はそれを止めて新しい髪紐で高い位置に結い始めた。


杏「うむ！こちらを見てくれ！！」


菫が髪紐に触れながら振り返ると、杏寿郎はパッと顔を輝かせた。


杏「リボンを付けた姿も愛らしかったが、こちらは凛とした君の魅力がより引き出せているな！！」


髪紐は長めで、その端には小さな花の飾りが付いている。

菫が動くたびにその花が揺れた。


杏「……男の前ではあまり頭を動かさないよう気を付けるんだぞ！」


菫はそれがどういった意味なのか分からなかったが、取り敢えず素直に頷いた。

すると杏寿郎は『うむ！』と満足そうに笑った。