第52章 誕生日、そして二人の時間
「…っ」
菫はこそばゆくて身を捩ったが、杏寿郎の力が強過ぎて全く意味を為さない。
「……杏寿郎さん…許してください…。お食事もできています…。」
菫がそう言うと、杏寿郎は食事の代わりに菫の首筋を甘噛みした。
「…っ」
菫の体が跳ねる。
杏寿郎は桜色に染まった首筋を見つめながら食んだところに優しい口付けを落とし、そのまま唇で首筋を上になぞった。
すると腕の中の菫が突然ガクンと脱力してしまった。
杏寿郎は暴走してしまった事に気が付くと慌てて菫の顔を覗き込む。
杏「すまない!大丈夫か!!」
赤い顔の菫は腰を抜かしてしまっていた。
目には涙が滲んでいる。
「や、やりすぎです…。こんな、こと…。」
声が僅かに甘くなっている。
それを聞くと杏寿郎の頭は痺れたが、それでも『これ以上は駄目だ。』と眉を顰めてなんとか堪えた。