第52章 誕生日、そして二人の時間
―――
杏「菫!!」
いつもとは違う帰宅の言葉に、菫は首を傾げながら出迎えに来た。
「杏寿郎さん、如何されっ」
最後まで言い終わらないうちに抱き寄せられた。
杏寿郎はまだ玄関に上がっていない為、顔の高さが近い。
加えてここまでのスキンシップはとても久し振りであった。
「きょ、杏寿郎さん…、継子の方々は…?」
杏「二人切りだ。」
低く甘い声に菫の喉がこくりと鳴る。
途端に頬と耳が熱くなった。
心臓も壊れそうに脈打ち、杏寿郎の高い熱に頭が痺れる。
「あの…、」
杏寿郎は菫の弱った声を聞くと、少し体を離して額に優しく口付けた。
「きょ、杏寿郎さん!」
杏「…すまない、堪らえようとしているのだが…。」
自身を律する事が得意な筈の杏寿郎がそんな事を言う。
そして熱っぽい瞳で見つめると、今度は菫の首筋に顔を埋めながら抱き寄せた。