第50章 薬がもたらしたもの
「お、お待ちください!杏寿郎さん…っ」
菫は自身の世話をしようとする杏寿郎を慌てて止めようとしたが、杏寿郎は菫の制止を聞かずに膳持って居間に戻って来た。
菫は諦めたのか眉尻を情けなく垂らしながら後について居間へ入った。
杏「俺の時のようにならないよう、こまめに食事を取れと再三注意したろう。君の献身は身を滅ぼすぞ。限度がある。」
杏寿郎の静かな声は珍しく険しさを孕んでいた。
菫はそこまで言われると流石に大人しく置かれた膳の前に膝をついた。
「申し訳ありません…。」
菫が食事を取らなかったのは意図的ではなかったが、理由があるとしたら『食べていない炭治郎の前で食べるのが申し訳なかったから。』だ。