第49章 進めたい関係
杏「君には様々な感情を見せてきた筈だ。君は俺の人間らしい部分を知ってくれたのではないのか。」
そう言われると菫は目を見開いて首を横に振る。
「杏寿郎さんの事はきちんと人として、男性として見ているわ…!ですが…、高尚な御方であるのは事実です。その…、いえ、だからといって携えているそれが俗っぽいという訳ではないのですが、なかなか一致しないのです…。」
杏寿郎は菫の考えを一通り聞くと、取り敢えず大きなすれ違いはないのだと知ってほっとした。
杏「俺は高尚な人間ではない。」
「申し訳ありませんが、これに関しては意見を曲げるつもりは御座いません。」
菫が頑なな声色でそう言うと、杏寿郎は諦めて笑った。
杏(高尚だという俺と同衾出来るのだろうか。)
そんな事を思いながら、自身の笑い声に首を傾げる菫を撫でる。
そして、『夫婦になったら苦労しそうだ。』と思ったのだった。