第49章 進めたい関係
「杏寿郎様、お帰りなさいませ。竈門様は今目覚めたばかりです。」
杏「そのようだな。本当に御苦労だった。さあ、君はもう寝てくれ。」
杏寿郎はそう言うと菫の身を案じ、部屋へ引っ込ませようと廊下へ連れ出した。
「ですが、杏寿郎様の配膳を」
杏「そのくらいなら自分で出来る!君は俺を甘やかし過ぎだ!」
杏寿郎はそうきっぱり言うと『待ってください、ですが、』と反論する菫の背を押し、部屋の前まで無理矢理連れて行った。
それでも菫がしつこく世話を焼こうとするので、杏寿郎は菫の頬をむぎゅっと両手で包んだ。
頬を寄せられた菫はきょとんとしている。
自分でやっておきながら、杏寿郎はその表情が愛らしくて笑い出しそうになるのを必死に堪えた。
杏「では急いで食べる!そうしたら俺も睡眠を取るので一緒に寝よう!!」
その言葉に寝不足の菫はパッと顔色を明るくさせた。
「またこのお部屋で寝て下さるのですね。」
杏「…………。」
『 "一緒に" とは時間の話であって場所の話ではない。』
そう思ったが、杏寿郎は頭が回り切っていない状態の菫が自身と共に居たいと思ってくれた事を嬉しく思った。
杏「…ああ。手を繋いで寝よう。」
杏寿郎が優しくそう微笑むと、菫も幸せそうに微笑み返す。
そんな顔を見る度に、杏寿郎は早く菫との関係を進めたいと思うのだった。