第48章 青い彼岸花の薬
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杏(壱ノ型、不知火!!)
杏寿郎が刀を横に振ると、遠くにいた筈の菫の所まで強い風が届いた。
(…すごい……。)
菫は継子達と一緒に杏寿郎の体の具合いを見に庭へ下りている。
杏「…確かに効果はあったな。」
杏寿郎はそう言うと刀を振るって他の技も出していった。
杏「玖ノ型、煉獄!!!」
「わ、あ…ッ」
菫は大きな龍が見えた気がして目を見開いた。
(これが炎柱様になる前の任務で使った奥義…!直接見られるなんて…!)
菫がそう興奮していると、同じく興奮した様子の三人の声も聞こえてくる。
杏寿郎が一息ついて周りを見渡すと、飛んだ石が当たったのか塀が傷だらけになっており、植わっていた木も倒れてしまっていた。
慌てて菫達に視線を移し、無事を確認すると安堵の笑みを浮かべながら駆け寄った。
杏「軽く放ってこれだ。体の動かし方に慣れればもっと強くなれるだろう。」
伊「じゃあ次は俺だぜ!!」
伊之助はそう言うと薬を取り出し、水を求めて縁側へ上がった。
「あっ!嘴平様!お部屋で…お布団の上で飲まれた方が宜しいかと…!」
杏寿郎はそれを聞いてハッとした。
杏(他の三人にも付きっきりで世話をするつもりだろうか。)
もやもやとする気持ちを覚えたが、自身は既にしてもらっている。
加えて伊之助達は少年だ。
『適切な距離を取るように。』とは言えなかった。