第48章 青い彼岸花の薬
杏寿郎はリボンを受け取ると菫に後ろを向かせ、意外にも器用に結っていく。
杏「弟の髪を結っていたんだ。」
菫の気持ちを読んだように言う。
「…そうでしたか。」
菫は杏寿郎がその弟と会えていない事を思い出すと迂闊に話題を振れず、ただされるがままになりながら項を桜色に染めた。
杏「…うむ!出来たぞ!!」
杏寿郎がそう言うと菫は振り返り、頬を染めながら頭を下げた。
「ありがとうございます。」
杏「とても似合っている。毎日付けてくれ。」
杏寿郎は柔らかくそう言うと、抱き締めたくなる気持ちを抑えて踵を返した。
杏「では指導に戻る!まだ指令は来ていないが見廻りには行くので腹拵えを頼む!!」
「はい、承知しました。」
菫は再び頭を下げてから顔を上げると、手を頭に遣ってリボンに触れた。
そんな筈はないのに、リボンは杏寿郎の熱を帯びている気がした。