第47章 寄り道と名前
杏「菫さん、待たせてすまない!これで隊服姿の時も俺が贈った髪飾りを付けていられるな!」
菫が嬉しそうな杏寿郎に柔らかく微笑むと再び視線が突き刺さる。
菫はそこで初めて自身が嫉妬の対象になっているのだと悟った。
(その気持ちはとっても分かるけれど…、)
確実に此処に居る誰よりも杏寿郎を強く崇拝していた過去がある菫は、思わず周りの女性に同情した。
(それでもこの御方は譲れない。)
そう思うと菫は自ら杏寿郎の手を握った。
「ありがとうございます。家に帰ったら杏寿郎様が付けて下さいませ。」
女性特有の悪意に気が付いていない杏寿郎は、それが女避けの為の台詞だと分からず僅かに頬を染めたのだった。
杏「俺は御守りで十分だ!」
菫が『リボンのお返しをしたい。』と言うと、杏寿郎は予想通りの返しをした。
杏「君の御守りのご利益は凄いからな!」
そう言ってにっこりと微笑み掛けられると、菫は少し申し訳なさそうに微笑み返した。