第47章 寄り道と名前
杏「君はリボンを贈ったら隊服の時にも付けてくれるだろうか!とても愛らしい!」
菫は広くはない店内でそう褒められると頬を赤らめた。
「…杏寿郎様から頂いた物でしたら喜んで付けます。」
小さな声でそう言うと杏寿郎はパッと明るい笑顔を浮かべ、青いリボンを勘定台へ持って行った。
その隙に意地悪な顔をした女が寄ってきて菫にわざと強く当たった。
「…っ」
油断していた菫は思い切り尻餅をついてしまい、驚いて女を見上げようとした。
しかし、どの女なのか見当がつかない。
代わりにくすくすと笑う声が其処彼処から聞こえてきた。
菫は向けられた悪意に心当たりが無くて困った様に眉尻を下げながら立ち上がろうとする。
すると今度はあからさまに近くの女に肩を押され、再び尻餅をつかされた。
(………わざとだわ…。)
菫はそう認めると再び立ち上がろうとした。
別の女がまた肩を押したが、今度はぐっと堪えて転ばなかった。
そして立ち上がって周りをぐるりと見渡す。
「これ程多くの方にされたとなると私の方が何かをしてしまった可能性が高い事は分かります。ですが心当たりが無いのです。どうか教えて頂けませんか。直すよう努力致します。」
女達は菫の鈍感さに呆気に取られた。
そんな事をしてる間に杏寿郎が帰ってくる。