第47章 寄り道と名前
「……新鮮です。」
菫は無意識に杏寿郎の手を握ったまま歩いた。
杏寿郎はそれに気が付いていたが、指摘せずに楽しそうにする菫を微笑ましそうに見つめた。
杏「君の髪飾りを買おうか。」
驚いた顔で振り返る菫の髪にはカキツバタの簪がある。
「そんなに貰えば毎日どちらを付ければ良いのか迷ってしまうわ。」
杏「それは愛らしい悩みだな!」
杏寿郎はそう言って笑うと、戸惑う菫を連れて小間物屋へ入って行った。
(………?)
そこは杏寿郎が菫の誕生日プレゼントを買いに通っていた店であった。
つまり、常連客の中にも杏寿郎のファンがいる。
(何だか視線が痛い…。)
杏「菫さんは何を合わせても似合ってしまうな!だが青い物から選ぶなら…、」
杏寿郎はそう言いながら菫に簪やリボンを当ててみる。