第47章 寄り道と名前
―――
(……あれ?)
「杏寿郎様。」
菫は首を傾げながら辿り着いた街を見つめた。
杏「どうした!」
対して杏寿郎はとても楽しそうだ。
「あの、行きの道では寄りませんでしたが此方に御用がお有りなのですか?」
そう問われると杏寿郎の笑みを浮かべる口元が少しぎこちなくなる。
杏「すまない…君と歩きたいだけだ。」
「…………。」
つまり、普段この様に外を歩く時間が無かった杏寿郎は菫とデートをしたかったのだ。
「…嬉しく思います。」
菫はそう言って俯きながら頬を染める。
すると杏寿郎は僅かに赤くなった耳を見付けてほっと息を吐いた。
『早く帰って任務に備えてもう少し寝るべきだ。』と言われると思ったのだ。
杏「君は変わったな。昔の君も好きだったが、今の方がより好ましい。」
「え…、」
道を歩きながらそんな事を言えば周りに注目されてしまう。
菫は通り過ぎる人と目が合うと顔を赤くさせた。