第46章 再会
重「本当にありがとう。十二鬼月については知っている。上弦の参ともなれば始祖を入れて四番目に強いという鬼だろう。それなのにその場に居合わせた全員の命を落とさせなかったとは見事だ。」
仕事柄、正義を貫こうと常に意識している重國は杏寿郎の澄み切った正義感をそう真っ直ぐに褒め、僅かに微笑んだ。
杏「それが俺の責務です。」
杏寿郎は重國に落ち着いた声音でそう言い、微笑み返した。
―――
杏「ではまた来ます!」
「本当にありがとうございました。」
杏寿郎が『もし任務が入れば困るので』と言った為に、昼をご馳走になった後二人は屋敷を出た。
重國と晴美、蓮華は門の外まで出て来て、二人が見えなくなるまで見送った。
そして、見送り終わると重國は徐に口を開いた。
重「菫は駆け落ちなどしていない。今いらした男性は煉獄家のご長男、煉獄杏寿郎さんだ。菫をお見初めになられ、清水家、立花家の合意の元一緒になろうとしている。」
蓮「…お父様?」
戸惑う蓮華が首を傾げると、晴美は蓮華を止めて周りを見るように促した。
重國はこっそり様子を窺っていた手伝いの者や警備の者に説明をしていたのだ。
重「二人は恥ずべき事をしていない。立花家に恥をかかせ、清水家の名に泥を塗った娘は存在しない。私は菫を杏寿郎さんの元へ嫁がせるつもりだ。くれぐれも、」
そう言って重國は使用人達を振り返る。
重「くだらない噂は立てるんじゃない。」
唸るような酷く低い声に皆が慌てて頭を下げると、重國は大股で屋敷へと入って行った。
蓮「『嫁がせるつもりだ。』と仰っしゃいましたわ!」
晴「そう言い切れたのは蓮華が頑張って俊彦さんをお婿さんにしてくれたからよ。」
晴美はそう言って蓮華の頭を撫で、にこにことしながら屋敷へ入って行った。
蓮華は両親の後をすぐに追わず、少し振り返って門の外を見つめた。
蓮(本当にあと少しの雰囲気だった。あと少しでお姉様も幸せになれるんだわ。)