第45章 継子三人組
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「炎柱様。…竈門様、我妻様、嘴平様。」
菫が無防備な浴衣姿で就寝の挨拶に来ると、杏寿郎は口角を上げながら縁側へ駆け寄った。
杏「うむ!就寝の挨拶に来てくれたのだな!だがこの様に薄着では風邪を引いてしまうぞ!次はもっと厚着して来ると良い!」
「…はい。」
杏寿郎の笑顔のような表情が焦りを孕んでいた為、今が涼しい季節ではない事を分かりつつ菫は素直に頷いた。
杏「それから俺の事は継子の前であろうと下の名で呼んで構わない!」
「分かりました。」
その時、菫は杏寿郎の凛々しい眉が普段よりもほんの僅かに下がっている事に気が付いた。
(………。)
何となく放っておけなくなり両手で杏寿郎の左手をぎゅっと握る。
そして、くんっと引っ張ると、首を傾げて近付いた杏寿郎の耳元に口を近付けた。
『…お休みなさい、杏寿郎様。』
耳元で艶っぽい声を出された杏寿郎は笑みを浮かべたまま固まり、菫はサッと三人組に頭を下げてから自室へ駆けて行った。
炭「どうしたんだろう。煉獄さんから強い動揺の匂いがするけど。」
善「匂いだけで良かったな、炭治郎。」
会話が全て聞こえてしまった善逸は恨めしそうな顔を炭治郎に向けた。