第44章 青い彼岸花
杏寿郎は耀哉の顔から微笑みが消えたのを初めて見た。
耀「これ程の収穫があるとは思わなかった。鬼を作り出したのがただの医者だったとは…。」
そう言いながら杏寿郎に手渡された種を撫でる。
そして異変に気が付いた。
その種はもう芽吹き始めていたのだ。
杏「…分けて貰った時には確かにただの種でした。帰りの数時間、胸元に仕舞っている間に芽吹いたのです。共にいた清水菫隊士が蕾に触れた時も蕾が咲きました。咲くこと自体が珍しいという花が一面に咲いたという点も気になります。」
それを聞いた耀哉は少し視線を落としてゆっくり瞬きをした。
耀「まるで『鬼殺隊に使われたい』という意志があるかの様だね。」
杏「自分は賛成出来ません!あまりにも危険過ぎる!実際、その薬を与えられた鼠は人を喰い殺しています!人喰い鬼を増やす可能性が少しでもある以上認められません!!」
その意見を聞くと耀哉は微笑みと共に頷いた。
耀「確かにこれは慎重に取り扱わなくてはならない。けれど、どっちにしろ今のままでは駄目なんだ。もう一つの方法よりはずっと良いのかも知れない。」
杏「…もう一つの方法とは何でしょう。」
耀哉は杏寿郎が見えているように目を細める。
耀「痣、というものがある。」
そう切り出すと、耀哉は鬼殺隊士の皮膚に現れた事がある痣とそれがもたらす恩恵の説明をした。