第44章 青い彼岸花
杏「いつかそう呼べるだろうか。」
そう言いながら菫の桜色の頬を見つめる。
そこに口付けた事を思い出すと、もう一度しても許されるのではという思いが浮かんでしまった。
しかし、今顔を近付けてしまったら唇にしてしまう気がした。
そんな自分に眉を寄せる。
杏(駄目だ。了承も得ずにすべき事ではない。何よりそういう思い出はきちんと分かち合いたい。)
杏寿郎はそう自身を抑えると、菫の頭を優しく撫でて、ベッド脇から離れた。
―――
昼過ぎに五人が目覚めると、杏寿郎の継子になる、ならないの話が始まった。
炭「俺は是非お願いしたいです!!」
善「俺は遠慮しときます。」
伊「俺は誰の指図も受けねぇぜ!!」
(杏寿郎様のご指導を断るだなんて…。)
菫は黙りながらも静かに怒っていた。
柱から誘われるなど身に余る光栄に決まっているからだ。