第44章 青い彼岸花
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杏「菫さん。」
杏寿郎はあまねを見送るとすぐに炭治郎達の部屋を覗いた。
小さく呼びかけても返ってくるのは四人分の寝息といびきのみ。
見れば菫は無防備に皆に向かって寝顔を晒している。
見るのに大変な思いをした杏寿郎は何だかもやもやとしてしまった。
杏(しかし起こす訳にも…。)
そう思うと杏寿郎は使っていた病室から枕と掛け布団を持ってきて、菫の隣の空いているベッドで眠る事に決めた。
布団と枕を置くと菫のベッド脇にしゃがみ込む。
菫の寝息は相変わらず穏やかだ。
杏寿郎の目がスッと細くなる。
杏「…………菫。」
杏寿郎は眠る菫に口にした事がない呼び名で呼び掛けてみた。
「…………。」
菫はやはり穏やかに呼吸するばかりで一向に起きない。
さらっと前髪を撫でてみても少し眉を寄せるだけだ。