第43章 対話
「こ、こういう所です!」
杏「悪いが分からん!きちんと言葉にしてくれ!!」
背を向けるように寝返りを打ってしまった菫を追って、杏寿郎はとうとう菫のベッドに手をついた。
「!!」
それは流石に非常識だと思った時、杏寿郎も我に返って急いで手を引いた。
杏「すまない!!」
続いて赤くなって軽く睨んでいる菫に気が付くと、菫が何に怒っていたのかを察して頬を染めた。
杏「……確かに良くない体勢だった!改めた方が良いな!!」
杏寿郎は敢えて元気の良い声を出したが菫は返事をしなかった。
しかし、杏寿郎にとってはそれさえも悪い反応ではなかった。
菫が素直な感情をぶつけてくる事は、むしろ好ましかったのだ。
杏「だがどうしてあの様に棘のある声色を出したんだ。あれは怒っているというより…、」
そう言いながら何気無く菫の耳を見れば、酷く赤い。
杏寿郎は桜色の項もちらりと見えている事に気が付くと、慌てて視線を逸した。
杏「怒りよりも恨みのような物を感じたが!!」
「…………それは…、」
菫は少し振り返り、視線を逸して僅かに頬を染めている杏寿郎を見つめた。