第43章 対話
凛としている点は同じなのだが、確かに聴き比べてみると女性らしさが桁違いだった。
そして――、何より艶っぽかったのだ。
杏寿郎はそんな菫の意外な一面を封印してしまいたくなった。
杏「……頼みを聞いてくれてありがとう!だが確かに鬼殺隊にいるうちはその声で男に話し掛けるべきではないだろう!」
なんとかそう返すと菫はすぐに頷き、『ご助言ありがとう御座います。』と落ち着いた声音を出した。
しかし、すぐに首を傾げる。
(……杏寿郎様と二人切りの時はどうするのが正解なのかしら。)
視線の先の杏寿郎は笑みの様なものを浮かべて感情を隠してしまっている。
(ううん、悩むまでも無い。徐々に戻す必要だってあるし、何より他の男性とは訳が違うもの。……恋仲の杏寿郎様に隠す必要なんて無いわ。)
菫はそう結論を出すと杏寿郎と二人切りの時は声を戻す事に決めたのだった。
杏寿郎はその決定に少し動揺したが、菫に悟られる前に順応し、二人は次に煉獄家の話題へと移った。
杏「前にも言ったが、母は他界している。そして鬼殺隊を引退した父は今、弟と二人で暮らしている。」
杏寿郎はまずそう短く説明した。