第43章 対話
杏(風呂で気分転換できたようだな!)
そう思ったところで首を傾げる。
菫は何かを持っていた。
杏「菫さん、それは何だろうか。」
菫はそう問われると、手に持っていた物を机に置いてからすぐに杏寿郎を振り返った。
「すり鉢や秤、生薬等です。匂いは無い物なのでご安心下さい。」
杏寿郎は少し首を傾げて微笑みながら『そうか!』と返した。
そうしてじっと見守っていると菫は調合を始める。
(これからの時間、鬼狩り様が沢山いらっしゃる。傷薬の用意はいくらあっても困らない。)
菫はそう気合いを入れると生薬を秤にかけ、すり鉢で粗く潰し、ガーゼに包んで封をしていく。
後の火を使う作業は他の人に任せることになるが、それでも薬を作る効率は上がる筈だ。
菫はその作業に没頭していった。
杏(……なるほど!)
一方、菫の行動の意図を理解した杏寿郎は、鍛錬をする訳にもいかないので代わりにベッドの上に胡座をかいて瞑想をする事にした。
杏「……………………。」
「……………………。」
病室には菫が作業する音しか響かない。
そして、しのぶがあまりの静けさを不審がって戸を開くまでその時間は続いた。