第43章 対話
日が落ちる前、つまり蝶屋敷が怪我人の対応で忙しくなるより前に泊まっている者達は入浴を始める。
菫はアオイに声を掛けられるとぼんやりとしながら一緒に風呂へと向かった。
ア「しのぶ様は無理な動きをしなければ傷が悪化する事はないだろうと仰っていましたが、何かありましたら遠慮せずに言ってください。」
「はい。ありがとう御座います。」
菫は上の空な空気を纏っていたが、それでも気遣って共に入ってくれるアオイにきちんと頭を下げた。
(………良くないわ。ずっと頭がぼんやりとしてるもの。このままでは大きな失態をおかすかもしれない。)
「神崎さん。お訊きしたい事があるのですが…、」
菫はぎゅっと手拭い握ると隣で体を洗うアオイにそう切り出した。
―――
杏「…………。」
杏寿郎は風呂から帰ってきた菫が普段の凛とした雰囲気に戻っているのを見てほっとした。