第42章 恋仲
杏「特に重國さんは五年前からその事を知っていて、君を大変心配していた。」
「…………お父様が……そんな…………、」
菫は当然呆気に取られた。
自身の父親は特別頭が固いとよく知っていたからだ。
杏寿郎は信じて貰おうと身を乗り出す。
杏「確かに初めは信じなかったそうだ。だが重國さんは列車の鬼と遭遇されている。幸い隊士が退けたそうだが、その戦いを見て信じるようになったと仰っていた。」
「………。」
鬼と鬼殺隊士の戦いを見れば確かに信じざるを得ないだろうと納得しつつ、菫はやはり呆然としたままだ。
杏「あの鬼は君が清水家へ戻ったら君の目の前でご家族の命を奪うつもりだったらしい。なので俊彦さんは君の居場所を掴んでおきながら肝心な情報は周りにひた隠しにしていた。」
「………鬼の考えは知っていました。独り言を聞いたんです。」
杏寿郎はそれを聞くとやはり菫は無意識に清水家へ帰るまいとしていたのだと悟った。
杏「蓮華さんは君が家族を守る為に帰らないでいるのだと信じた。それは正しかったようだな。」
「……それは…………、」
菫はその時、どうやって帰らないようにしていたのかを思い出した。