第42章 恋仲
杏(…………………………………。)
蝶屋敷に来てから約六時間が経ち、昼前になった。
此処に来てからはずっと穏やかな時間が流れている。
しかし杏寿郎は横になりながら腕を組み、ぐっと眉を寄せていた。
杏(……菫さんと全く話せん!!!)
早く菫の家族が列車の鬼について知っていて、菫の行動を理解しているのだと直接伝えたかったのだが、なかなか叶わない。
しのぶが病室へ入って来る度に『会わせてくれ。』と願ったが、しのぶは笑顔で毎度流していた。
それでも杏寿郎は折れずに食い下がり続けた。
し「ではもう同じ病室にしますね。どうせ同じお屋敷に住んでいたのですから構わないでしょう。」
しのぶはとうとうどす黒いオーラを身に纏いながらそう言い放った。
杏「それは…、だが、」
し「はーい、運んで下さーい。」
訳も分からず同室にされた菫は目を丸くしていて、杏寿郎はそれを見ると居たたまれなくなった。
対照的にしのぶはスッキリとした顔になっている。