第40章 無限列車―其の弐
(魘夢は俊彦さんが最初から大体の事を知っていたと言った…。鬼の言う事を信じて良いのかは分からないけど、もし本当なら…、)
そして、菫は杏寿郎が俊彦と同じく大体を把握している事を知らなかった。
それ故に杏寿郎の前で俊彦にこう言った。
「俊彦さん…、夢の中で列車の鬼と色々話をしたのですが、その時、俊彦さんが清水家をずっとその鬼から守って下さっていた事を知りました。」
俊「………。」
杏「………。」
「家族を、蓮華を守って下さってありがとうございました。最初は鬼殺隊の為の結婚であったかもしれませんが、今は蓮華の事を本当に愛していらっしゃるのですよね…?」
俊彦は固まっている杏寿郎をちらりと見てから頷いた。
俊「…ああ、確かに愛している。それより、」
杏「待ってくれ。きちんと二人切りで話したい。」
その言葉に俊彦は口を噤み、菫は首を傾げた。
杏寿郎はそんな菫の体を片手で支えると優しく頭を撫でる。
杏「気にしないでくれ。そろそろ此処を発とう。俊彦さん、一先ず失礼させて頂く。名古屋については後ほど詳細を伺いたいので鴉を飛ばしても良いだろうか。」
俊彦は仲睦まじい様子を見て少し複雑そうな笑みを浮かべた。
俊「…勿論です。お待ちしております。」
俊彦が頭を下げると菫も頭を下げて別れを告げた。
そうして無限列車、もとい、菫の悪夢の原因は消え去り、名古屋への旅は延期となって、そして上弦の鬼の首を斬ることが出来たのだった。