第40章 無限列車―其の弐
俊彦が嘔吐いて膝をつくと菫は転びそうになりながら列車まで走る。
「…………………………。」
視線の先では杏寿郎が見ただけで体が震えるような空気を纏う鬼と闘っていた。
菫が目を見開いて思わず列車の陰から出ようとすると、その気配に気が付いた杏寿郎が見た事のない剣幕で菫を睨んだ。
杏「出てくるなッ!!!」
「…っ!!」
その剣幕を見れば分かる。
鬼の遊ぶような闘いぶりを見れば分かる。
柱相手にそんな事が出来るのは――、
(十二鬼月………それも、恐らく…上弦の鬼だわ…。)
菫は腰を抜かしてずるずるとその場にへたり込んでしまった。
(お、応援は……?一緒に任務に当たっていた柱の方が居るんじゃ…、)
そうして慌てて探すも、二人の闘いを見て目を見開いている少年の隊士しか見当たらない。
(嘘、嘘…、今押せていない時点で杏寿郎様は勝てない。鬼は疲れないし負傷しないから、どうしたって時間が経てば人間は負ける。)
そう思った時、その鬼、猗窩座の拳が杏寿郎の鳩尾に深く入った。