第40章 無限列車―其の弐
「………ん、」
気絶していた菫が目を覚ますと、俊彦が青くなって列車の陰から何かを見つめていた。
「……俊彦さん…?」
列車が横転する直前の記憶はあった為、菫は惨事を見ても然程驚かなかった。
ただ、俊彦の表情にだけ疑問を抱いていた。
俊「駄目だ、菫さんは見てはいけない。もっと遠くに、」
「…!」
菫は俊彦に手を掴まれると振り払った。
刀が硬い何かにぶつかる音がしたからだ。
「…ど、退いて下さいませ。杏寿郎様が…まだ闘われているのでしょう…?何故、だって、杏寿郎様は柱です。何故そんな顔を…、」
菫がそう言うと俊彦は眉を顰めながら菫を羽交い締めにし、音から遠ざかる方へ下がらせようとした。
「離して下さいませ!!!」
俊「見れば君は出ていこうとするだろう!君には何も出来ない!!見ない方が良い!!重國さんにいつか君をあの家へ帰らせると約束したんだ!!」
菫は俊彦の言葉を聞けば聞く程冷静さを欠いた。
そして、長らく使っていなかった呼吸を使った。
菫から妙な呼吸音が聞こえると俊彦は青ざめる。
俊「本当に駄目だ。頼むから、」
「ごめんなさい。」
菫はそう言って常人の男性よりは少し強めな肘鉄を俊彦の腹に入れた。