第40章 無限列車―其の弐
魘「……ッッ」
魘夢は初め何が起こったのか分からなかった。
そして杏寿郎は魘夢が回復に手間どっている間に合同任務に当たっていた竈門炭治郎、嘴平伊之助、我妻善逸、そして鬼の妹、竈門禰󠄀豆子へ迅速に指示を下し、自身は後方五両の乗客を守ることにした。
杏「…………。」
杏寿郎は列車後方に戻ると、菫が涙を流しながら座席で眠っているのを見付けて目を丸くした。
杏(何故菫さんが俊彦さんと列車に…。)
そう思っていると菫に鬼の体が伸びてくる。
杏寿郎はハッとし、すぐに柱の顔を取り戻した。
杏(考えても答えは出ない。今は目の前の事に集中するんだ。絶対に死者は出さない!)
そうして杏寿郎は絶え間なく五両の中を駆け回り続け、鬼の手から乗客を守り続けた。
五両という長い区間を目にも止まらぬ速さで動き続け、そしてその速さのまま狭い列車内で正確に剣を振るうなど、本来ならあり得ない話である。
柱クラスの人間でなければ鬼殺隊士であろうと不可能だ。
杏(この鬼は血鬼術こそ厄介だが物理的な殺傷能力は低い!頼むぞ、竈門少年!猪頭少年!!)
そうして杏寿郎が対応していると聞くに耐えない鬼の悲鳴が響く。
杏寿郎は炭治郎達が鬼の首を探し当てたのだと悟った。
自然と口角が上がる。
杏(継子にするのが楽しみだ!!)