第38章 自覚
そう思った瞬間、酷い悪寒から菫の全身の毛がぶわっと逆立った。
―――『殺してあげる。』
瞳が揺れる。
息が出来ない。
頑なに抑えてきた杏寿郎への恋心をトリガーに、ずっと恐怖を抱いてきた "それ" の正体を思い出したのだ。
もう一度あの声が頭に響く。
『―――挫折して鬼狩りになるのを諦めたり、夢の存在に気が付いたなら――大切な妹を殺してあげる。君は、』
男の愉しそうな声が聞こえる。
『……君はどんな顔をするのかなあ。』
「蓮華ッ!!!」
菫は青くなると屋敷を飛び出した。
―――
霞ヶ関に着くと菫はすぐに実家の屋敷を目指した。
(蓮華、蓮華…!!)
俊「菫さん。止まって下さい。」
あと少しで屋敷が見えそうであったのに、男が菫を呼び止めた。
菫の頬に汗が伝う。
それは菫が置いてきてしまった元許婚の声であった。