第38章 自覚
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「…睡眠が十分に取れていません。」
杏「問題無い!!」
夕方に帰ってきた杏寿郎は、『これからすぐに任務へ向かうので軽い腹拵えをさせてくれ!!』と言ったのだ。
「御守りを必ず持って行って下さいませ。睡魔からも守ってくれるかも知れません。」
杏寿郎はその言葉に明るい笑い声を上げた。
杏「心配しなくとも去年くれた御守りも今年くれた御守りも肌身離さず持ち歩いている!眠気を飛ばす効果があるとは初耳だったがな!!」
菫はその明るい笑みを見て漸く肩の力を抜いた。
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「腕によりをかけたお食事と共にお帰りをお待ちしております。」
杏「うむ!楽しみにしている!!」
出発前、杏寿郎はそう言って菫の頭を撫でた。
その時焦燥感のような物がぞわりと湧き上がり、堪らず菫を抱き締めた。
杏「………………。」
「…………杏寿郎様…?」
なんとなく、菫が遠くに感じた。
確かに腕の中に居るのに嫌な予感が拭えない。
「………………。」
菫は答えない杏寿郎を心配して大きな背中をゆっくりと撫でた。
するとまた小さな恐怖心が湧き、そして少し大きくなった声が聞こえてくる。