第38章 自覚
―――
(………………………………。)
菫は杏寿郎の額に口付けてしまってから何度もその時の事を思い返していた。
そして、自身もされた事を思い出す度に額に触れ、頬を染めた。
(あの時、無意識だった…何であんな事を…。)
口付けた時に抱いた温かい気持ちを思い出そうとすると恐怖心が生まれてくる。
しかし――、四ヶ月も考え続けているうちにその恐怖心は随分と小さくなっていた。
(これは良い事なの……?…それとも………………、 )
―――『―してあげる。』
小さくなる恐怖心の代わりに聞こえてきた声がある。
菫はその声への興味も湧いていた。
(……何を、してくれるんだろう。)
聞こえてくるのは愉しそうで穏やかな声だ。
それ故に菫はそれが悪い物ではないような気がしていた。
そして、悪い物ではない気がするから余計に恐怖心が小さくなっていったのだ。
―――『―してあげる。』
(何だっけ……一回聞いたことがあるような、)
杏「只今帰った!!!」
杏寿郎の声に菫はハッと我に返って玄関へと向かった。