第36章 変化
「どうぞ。」
菫は用意した座布団に杏寿郎が座ったのを確認すると、傷口を診ようとそっと顔に両手を伸ばした。
触れた指は冷えに冷え切っていた。
杏寿郎はその時漸く菫が外で待っていた事を思い出した。
(…痛々しい。)
頬の傷は思ったより深く、額にも傷ができていた。
(杏寿郎様でも避けれない程速かったのかしら…それとも…、)
菫はなんとなく、杏寿郎は敢えて避けなかったのではないかと感じていた。
菫の眉が寄る。
それを見た杏寿郎は瞬きをしながらスッと視線を落とした。
杏「父上も悪気があった訳ではないんだ。俺が相応しくない言葉を口にしたのでついカッとなってしまわれたのだろう。」
「そうでしたか。」
菫にとって父親の心情などどうでも良かった。
杏寿郎は怪我をして、そして治療もされずに帰ってきている。
それは変わりない。それが許せなかった。