第34章 詰められない距離
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(あと四ヶ月で杏寿郎様も二十歳になられる…。いよいよ大人の男の人だわ。)
そう思うと何かいけない事を思い出しそうになって頭を振った。
(…蓮華は十八、俊彦さんは二十九になられるわ。もう、これ以上延期させるのは…。)
菫はそう思うと蓮華に会って、『早く事を進めるように。』と説得したくなった。
しかし、それは叶わない。
以前、蓮華に手紙で『会いたい。』と言われた菫であったが、その後杏寿郎を通して重國から『決して家族に会わないように。』と釘を刺されていたのだ。
(杏寿郎様が清水家をお訪ねになられた時もお父様だけは正式な言伝を残されなかった。やっぱり私を快く思っていないんだわ…。)
菫は罪への意識からそう誤解してしまったが、重國は重國で家族皆の事を心配していた。
今鬼殺隊に身を置いているのが菫の純粋な意志でない場合、昔の生活を思い出させる家族は慎重に行動しなければならない。
寝ている時に痛みを感じれば目が醒めるように、家族という刺激によって "夢" から醒めてしまうかもしれないからだ。
そして、夢から醒ましてしまうという事は、何かしらの力で踏み止まっている菫の邪魔をするという事だ。
それによって鬼の思惑通りに菫を実家へ引き寄せてしまう可能性もある。
(………………………。)
関係者なのに何も知らされていない菫は独りで自責し俯いた。