第34章 詰められない距離
杏寿郎はそんな天元を見ても笑みを絶やさなかった。
杏「安心してくれ!俺は正気だ!菫さんが結婚を拒んでいる原因は鬼にある可能性が高い事が分かったんだ!!その鬼を斃せば全て解決出来るかも知れない!!!」
天「……まじかよ。」
"鬼" と聞いて他の面々が集まってくる。
杏寿郎はまだ来ていない無一郎以外のメンバーに、菫を拐かした可能性のある鬼について話した。
実「鬼の趣味云々の前に取り逃がしてる隊士の指導をした方が良いだろォ。」
し「清水さんにそんな過去があったなんて…。」
行「喰うだけに留まらず甚振るとは正に外道の所業。」
小「鬼はみんな外道だ。」
蜜「菫さん…そんな事になっていたなんて…力になりたいわ……。」
義「……。」
天「…でもよ、それってお前を慕ってる気持ちも無くなっちまうんじゃねーの?」
天元は敢えてその考えを口にした。
見ない振りをする事は何の為にもならないと分かっていたからだ。
杏寿郎はそれでも笑みを絶やさない。
杏「どっちにしろ今の感情も男女のそれとは異なる!鬼を斃した後、受け入れてくれるまで全力で口説くので何も問題は無い!!」
杏寿郎の心からの笑みと迷いの無い声に天元も思わず笑みを浮かべた。
天「お前ってほんとそういう所ズルいよな。」
杏「何も狡い事はしていない!」
天「ちげーよ、褒めてんの。」
そうしてわちゃわちゃしていると無一郎がふらっと迷い込んで来るように庭へ入って来た。
杏(――そろそろ始まるな。)