第33章 誕生祝い
「………はい。」
菫が呆然としながらそう返事をすると、杏寿郎は困った様に首を傾げた。
杏「大丈夫か。」
そう問われてハッとする。
菫は何時の間にか脱衣所まで付いて来てしまっていたのだ。
「申し訳御座いません!!」
そう頭を下げると杏寿郎がすぐに『顔を上げてくれ。』と言う。
杏「君の事だから、一緒に入りたい訳でも脱ぐ様を見たい訳でもないだろう。悩み事か。」
「あ、いえ…大した事では…、」
杏寿郎の事を考えていた上に脱衣所へ共に入ってしまい、菫は後ろめたいやら気まずいやらで言い淀んでしまった。
その様子を見た杏寿郎は心配して菫の頭に手を伸ばした。
「……っ」
杏「……………………。」
二人同時に目を丸くする。
菫が杏寿郎を拒むように、無意識に自身の頭を腕で覆ったのだ。
「も……もうしわけ、ございません………。」
自身の行動に戸惑う菫を見ながら杏寿郎はどこかでほっとしていた。
最近は頭を撫でられる事に、菫が悪い意味で慣れ過ぎていたからだ。