第33章 誕生祝い
(お母様のお気に入りのお店だわ。きっと教えたのも…。)
「…ありがとう御座います。」
菫は何故か緊張してしまい、震える手で箱を開けた。
「……………わあ……。」
菫は愛らしくさり気ないモチーフに目を奪われた。
その顔には少女の様な笑顔が浮かんでいる。
俊彦から『いくら贈り物をしても微笑み一つ得られなかった。』と聞いていた為、杏寿郎はその笑顔をとてもありがたく思った。
杏「俺が付けても良いか。」
「…はい。ありがとう御座います。」
菫は珍しくふわふわと微笑みながら杏寿郎に背を向け、付けやすいようにと髪を両手で持ち上げた。
当然、先程まではちらちらとしか見えなかった項が顕になる。
杏「…………うむ。」
杏寿郎はその無防備な項を見てはいけない気がして、金具を凝視しながら付けてやった。
杏「付けたぞ!」
菫が髪を下ろしながら振り返る。
その姿は脳内で描いた姿より幾百倍も愛らしく見えた。
杏「やはり似合うな!いや、想像以上だ!!」
「ありがとうございます…。本当にありがとうございます。」
菫はそう言いながら眉尻を下げ、柔らかく幸せそうな笑顔を浮かべたのだった。