第33章 誕生祝い
杏「君に贈ったんだぞ。俺が君の髪を梳くのが自然なのではないか。此方に来てくれ。」
そう手を引かれ、杏寿郎の胸の中に倒れ込んで初めてハッとした。
―――此処はこの男の自室だ。
その自覚と共に菫の項が桜色に染まる。
杏寿郎はそれを見下ろしながら腕の中にいる菫の髪紐を解いて後ろ髪を優しく梳いた。
杏「形勢逆転だな。」
杏寿郎の声は楽しそうだった。
「……申し訳御座いませんでした。」
菫が呆気無く白旗を上げると、杏寿郎は声を上げて明るく笑った。
結局、白旗を上げたにも関わらず杏寿郎は満足がいくまで菫の髪を梳き、解放された頃には菫の顔は真っ赤になっていた。
自室に連れ込んでいるという意識が薄かった杏寿郎は、菫の赤さに少し首を傾げた。
杏「もう一つある!御守りのお返しだ!君も肌見離さず身に付けてくれると嬉しい!!」
そう言いながらネックレスが入った箱を差し出す。
菫はその箱が入った袋を見ただけで、杏寿郎が随分と気合いの入ったプレゼントを用意したのだと悟った。