第32章 五年前の真実
杏「……鬼殺隊士を泊める為だけに建てたと仰られていました。とても立派な屋敷でとても親切な方々だったと記憶しています。」
そう言いながら蓮華に視線を移す。
杏「俺は彼等が普段どんな商いをしているのか全く分からなかった。蓮華さんも俺達鬼殺隊が泊まる屋敷を見た事すら無いのだろう。表と裏をはっきりと分けていらっしゃるんだ。」
蓮「俊彦さんが……、立花家が…、」
杏寿郎は上手く飲み込めていない蓮華から重國に視線を戻した。
重國は杏寿郎と目が合うと頷いて再び口を開いた。
重「そうだ、立花家は裏で鬼殺隊を支援する家だった。それは…菫がいなくなってから知った。」
重國の視線が落ちる。
重「最初は『失踪した晩、道で眠る菫さんを家の者が一度保護した。』『家へ送り届けた筈だが、その後、鬼に連れ去られたのかも知れない。』と言われた。……訳が分からなかった。」
杏寿郎は眉を寄せた。
杏「他に犠牲は出なかったのですか。菫さんだけに固執していたのだとしても妙な話だ。菫さんは今も元気です。鬼に付き纏われたりはしていない。」
そう力強い声色できっぱりと言い切っても重國の顔色は晴れない。
重國はただ両手で顔を覆った。
重「鬼は一時期、菫ではなく此方に付き纏っていた。その鬼とこの屋敷を守ってくれている鬼狩り様を見た時、私は初めて彼等の言葉を信じたんだ。」
蓮「え………?」
何も知らなかった蓮華は瞳を揺らした。