第32章 五年前の真実
―――
重「当時幼かった事もあって蓮華には話していなかった。許してくれ。」
重國はそう断ってから話し出した。
重「私は…菫が失踪した原因は鬼にあると思っている。」
蓮「…………………え……?」
杏「………。」
蓮華は頭が固い父から "鬼" という言葉が出た事に酷く驚いた。
一方、杏寿郎は納得がいった顔付きになった。
杏「菫さんは自分の気持ちを最優先にする女性ではない。家を出る前に鬼に何かされた可能性があるという事か。」
その言葉に重國は頷いた。
重「最初は信じられなかった。そんな、非現実的な生き物はいないと突っぱねたくなった。だが、この話をしてきたのは…この子の義理の父親になる人だった。」
肩に手を置かれた蓮華は目を見開いた。
蓮「…そんな……、お義父さまが…鬼をご存知だなんて聞いたことが…、」
重「知っているだけではない。あの家は鬼狩り様を手助けしている一族だ。」
杏寿郎はハッとした。
菫を助けた日の夜、要は確かに『この近くに藤の花の家紋の家がある。』と言って杏寿郎を案内した。
そしてその藤の花の家には特徴があったが故に杏寿郎はそこを覚えていたのだ。