第31章 二度目の告白
「きょ、杏寿郎様。…と、お呼びして本当に宜しいのでしょうか…。」
菫が自身の下の名を呼ぶと杏寿郎はパッと明るい笑顔を浮かべて菫を再びきつく抱き締めた。
杏「ああ!勿論だ!!」
そして、菫が自身の燻っていた想いを知っても屋敷を出て行こうとしない事にも喜びを感じていた。
杏(前回は手を握っただけで出て行こうとされた。少しは彼女の中で変化が起こっているのかも知れない!)
杏寿郎は今はそれだけで十分だと感じた。
それから菫は、杏寿郎に『関係を迫ったりはしないので絶対に出て行かないでくれ!!』と何度も念を押され、何度も頷いてから解放された。
「…あ、」
杏寿郎の腕から出ると、菫はその場にへたり込んでしまった。
杏「大丈夫か!」
杏寿郎は慌てて膝をついてしゃがみ込んだ。
杏寿郎なら菫が座り込む前に助けられた筈だが、ふにゃふにゃしている菫が新鮮で思わず見入ってしまったのだ。
「だ、大丈夫です。なんだか…ふわふわして…。」
菫がそう言って少し俯くと、髪がさらりと流れて赤い耳が覗く。