第31章 二度目の告白
杏「…まだ慣れていない。」
主人である自分がそう言えば、菫が自身の意見を曲げる事は分かっていた。
菫は案の定、『口出しして申し訳御座いませんでした。』と謝罪した。
しかし、そうして繋ぎ止めても何の意味もない事も分かっていた。
杏寿郎は試す様に菫の頭を撫でてみる。
すると、手は退かされないものの、やはり菫は笑顔を見せてくれなかった。
流石に『笑ってくれ。』とまでは言えない。
そうしたら今度こそ取り返しがつかなくなる気がした。
杏(慣れる為だという口実はもう使うべきではないだろう。)
そう思いながら手を引っ込める。
かと言って、本当の理由は言えない。
それは自身の想いを伝える事と同じだからだ。
そうしたら距離を置かれる。
一緒に生活出来なくなる。
――では形だけ繋がった生活をこのまま続けるのか。
杏「………………。」
杏寿郎は静かな瞳で菫を真っ直ぐ見つめる。
そして、思い切ったように口を開いた。