第29章 煉獄様の誕生祝い
(……煉獄様はお優しいから何を用意してもきっと笑顔で受け取って下さる。だけど、本当にこの御守りで良かったのかしら…。もっともっと作り直した方が…ううん、そもそも他の物の方が、)
杏「菫さん?」
菫が考え事している間に二人は門前まで出てきてしまっていた。
「あ……、申し訳ありません。」
菫は小さく頭を下げると羽織りを手渡し、手の中の御守りが杏寿郎に見えないように腕を下ろした。
「…………。」
杏「…ありがとう。」
杏寿郎は菫を見つめて口角を上げながら羽織りを身に着ける。
そして少し首を傾げた。
杏「その御守りは俺にくれないのだろうか。期待していたのだが…他の男に贈る物なのか。」
菫は驚いて顔を上げると目を見開いたまま首を横に振った。
「れ、煉獄様をお守り下さいと願いを込めて拵えました。」
自身の為に作ったのだと分かってはいたが、それでも杏寿郎は嬉しく思った。
恐る恐る差し出されたそれは以前見た菫の着物と揃いの柄だ。
それを見て嬉しそうに目を細める。