第29章 煉獄様の誕生祝い
それから杏寿郎は道着に着替えていつも通り午後の鍛錬を行い、日が傾いてくると切り上げて隊服に着替え、腹拵えの為に居間へと向かった。
杏「今日も相変わらずぴったりだな!!」
礼を言うように頭を下げる菫を見ながらそう笑い、並んだばかりの膳の前に腰を下ろす。
杏「何度も言うが、これ程多くの料理に美味く芋を混ぜられる女性はそういないだろう!この様に毎日菫さんの手料理を食べられて俺は幸せ者だな!!」
杏寿郎はさり気なく夫婦生活を想像させるような言葉を選んでみた。
しかし菫の嬉しそうな顔は、部下のそれと変わらなかった。
杏「…うむ。では頂こう!」
それから杏寿郎は相変わらず "わっしょい" と言いながら食事をし、歯刷子で歯を磨くとベルトに刀を差して玄関へと向かった。
菫は羽織りを持ってそれを追う。
その羽織りの下の手の中には丁寧に仕上げた御守りがあった。