第22章 認めた感情
どうしても幸せになれる未来が見えない場合、普通ならここで菫を遠ざけようとしたり、今からでも諦めようとして自身の感情と戦い、藻掻くのかもしれない。
相手を諦めきれずに気を病み、そして相手も不幸にさせるような結末になる場合もあるだろう。
しかし、切り替えが人並み以上に速い杏寿郎の感情はすぐにプラスな物へと変わった。
杏(うむ、とうとう認めてしまったな。それならば――、)
杏寿郎の顔にいつもの強気な笑みが浮かぶ。
杏(清水を全力で口説くとしようッ!!!)
そうスパッと決断すると戸を勢い良く開く。
杏「清水!!おはよう!!その男を紹介して貰っても良いだろうか!!!」
その大きな声を聞いた二人は同時に目を丸くしたが、嫉妬の気配を感じ取った圭太はすぐに嬉しそうに目を輝かせた。
杏「……………………。」
杏寿郎は予想外の圭太の反応に少し固まった。
そんな杏寿郎の元に圭太が走り寄って来る。
圭「炎柱様、おはようございます。自分は清水の同僚で最初に炎柱様のお屋敷管理の命を受けていた佐藤圭太と申します。清水の事は妹のように思っており、それ以上の感情も関係もありません。」
圭太は杏寿郎が欲しかった言葉を全て言ってくれた。
そして、頭巾のせいで見分けがつかなかったが、確かにその声は菫と謝罪しに来てくれた隠の声だと分かった。