第22章 認めた感情
圭「…で、女として働いてみてどうなんだよ。」
「どうとは何です。」
菫は棘のある声色ですぐにそう訊き返した。
圭太はそうなる事が分かっていたのか、ただ笑っている。
圭「お前な、こういった話題が嫌いなのは知ってるけど仕事を譲った俺にその態度はないぞ。」
菫はそう言われると流石にぐっと言葉を詰まらせた。
「……ごめんなさい。つい。」
圭太は菫にとって唯一長く共に居た仲間だ。
それでも向けるのは基本的にきりっとした表情であったが、纏う空気はやはり他の者と居る時とは異なる。
圭「よし、素直でよろしい。俺はな、ただ心配なんだよ。分かってるだろ。」
菫は少し黙った後こくりと頷いた。
圭太の妹は菫と同い年だった。
そして面影も、真面目で頑ななところも似ていた。
圭「これでもっと笑ってれば本当に橙子そっくりなんだけどなあ。」
そう言って圭太は菫の頬を摘む。
よくされる事であったので、菫はこれをいつも好きにさせていた。
「へふがわはひはへっほんはほ、」
圭「待て待て。」
圭太は慌てて菫の頬を放してやる。
そうすると菫は何事も無かったかのように口を開いた。
「でも私は結婚なんて本当に必要としていないの。」
何度も聞いた答えを聞き、圭太は溜息をつく。