第22章 認めた感情
圭「お前…、昨晩来たんだろ…?やっと挨拶に来たと思ったらそれかよ…。」
圭太は呆れた顔をしながらも、杏寿郎がやっと触れた菫の頭を慣れたようにぽんぽんと撫で、自身が調合していた薬について説明し始めた。
―――
圭「しっかし、炎柱様が菫を屋敷に置き続けると決めた時は驚いたな。」
「寛大なお方です。」
菫は圭太が手を止めても休まず作業を続けた。
それを見た圭太が菫の頬を抓る。
圭「少し休め。蟲柱様にも言われているだろ、休みを入れる事で不注意を防げる確率が上がる。」
「私は続けて作業しても調合を間違えた事がないわ。」
圭太は目を細めると、今度は鼻を摘んだ。
菫もこれには流石に驚いた顔をする。
「……鼻呼吸が出来ません。」
圭「良いから手を止めろ。少し休め。飲み物取ってくるから戻るまでに途中の物を脇に避けとけよ。」
菫は反論する機会を逃し、ただ部屋を出ていく圭太を見送ると渋々すり鉢や秤を一つずつ慎重に移動させた。
(我儘を聞いて下さった分、蟲柱様のお役に立ちたいだけなのに。)
「圭太さんを説得しなくては。」
そう呟いた時、丁度戻った圭太が湯呑みを菫の頭頂部にコンッと当てた。
圭「どう説得するんだ?休みは絶対だぞ。」
「圭太さん。お茶はありがとうございます。」
圭太は湯呑みを手渡すと『お茶 "は" ってなんだよ。』と言い、少しふざけたように眉を寄せた。
そして菫の前に胡座をかいて座ると茶を一口飲み、膝に肘をついて手のひらに顎を乗せた。